200年続く糀店

四万十町六反地(ろくたんじ)で井上糀店が創業したのは文政元年。西暦1818年から200年以上、薪や釜戸を使用する昔ながらの製法を続け、無添加の糀やお味噌を手作りしています。高知県産のお米にこだわり、じっくりと手間暇かけてできた生糀は風味豊かな香りを持ち、食材の旨味を引き出す力が強いことから、県内はもとより全国の料理人からの非常に高い評価を得ています。

 

廃業寸前から決意

昔ながらの風情あるご自宅兼製造場を訪れると親戚やご近所の方々と糀を作っている手を止め、井上糀店7代目である井上雅恵さんがお出迎えしてくれました。ご実家である井上糀店は継がず2010年頃までは大手半導体メーカーのエンジニアとして働いていた雅恵さん。一人でお店を切り盛りしていたお母様から突如「井上糀店を廃業しようと思う」と話がありました。スーパーなどでは安価な糀が並び、経営的にも厳しい時期が続いていたことが大きな理由でした。かし、「幼いころから当たり前にあった風景が無くなるのは寂しい。200年も大切に続けてきたお店をやめるのはもったない、私が帰る」とお母様に伝え、20年勤め上げたエンジニアを辞め、2011年に井上糀店を引継ぎました。

伝統と効率化の間で

効率化を図る為、一時は機材の導入を検討していたものの、東日本大震災の光景を目の当たりし、災害時などの避難活動にも使える釜戸や薪などの伝統的な方法を残す事に決めます。

井上さんに今後の展望を伺うと「これ以上大きくするのではなく、地元の人に愛されるようにコツコツと井上糀店を守り続けていきたい」とはにかみながら語ってくれました。

●『井上糀店』和食料理

地物のどぐろ姿 井上糀店の塩糀焼き