芸術家から農家へ

世界的な植物分類学者、牧野富太郎博士のふるさと高知県佐川町。ここでは、城西館和食料理長の松本昌時が「高知のフルーツトマトの中では最も美味しい」と絶賛する『アルテトマト』が栽培されています。ちなみに、佐川町出身の世界的な植物分類学者である牧野富太郎博士はトマトが大の好物。西洋酢をかけて食べ、毎食欠かさないほどの好物だったというエピソードが伝わっています。美術大学を卒業後、東京で空間美術に携わる仕事をされていた、生産者の中村陽介さん。28歳で農家になることを決意し、帰郷。米農家だった祖父の仕事を継いだものの、お米だけでは生活が難しく、生業にできる農業を探していた時にフルーツトマトに出会いました。

トマトハウスナカムラ 中村陽介さん
トマトハウスナカムラのハウスでは20種類以上のトマトが栽培されています

生き生きと育てる

作り方を学ぶうちに、水を与えずトマトにストレスを与えてただただ甘さ追求する一般的な栽培方法に疑問を抱くようになります。「トマトが生命の危機を感じながら無理な成長促すのではなく、健康的に育ったフルーツトマトが1番美味しいのではないか」という考えのもと、水は成長に必要なだけ与えるようにしました。さらに肥料は、米糠、お酢、お塩など植物が光合成をする際に必要な栄養分を取り入れ、果実だけでなく根や茎までしっかりと育つようにと独自の栽培方法を考案しました。また、地面に落ちた葉やトマトまでもそのまま土に返すことで、それが栄養分となり元気なトマトが育つ循環型の環境も整えています。

和食松本料理長(写真手前)が絶賛するアルテトマト

 

美味しいトマトとは

「実はトマトがあまり得意ではなくて。でもそんな自分だからこそ、誰もが本当に美味しいと思えるものが作れると思うんです」と語る中村さん。アルテトマトはただ甘いだけでなく、まろやかな酸味やほんのりとした苦味を含んだ複雑な味わいがあり、他のフルーツトマトには無い特徴を持っています。最後には、「トマト好きの方はもちろんですが、少し苦手と思う方にもぜひ食べてほしい。苦手な僕が作っているからきっと美味しいと思ってもらえるはず」とお客様へのメッセージを話してくれました。

 

生命力を感じる張りのあるアルテトマト

 

アルテ=芸術

2022年11月に命名されたアルテトマトの“アルテ”とはイタリア語で『芸術・アート』を意味する言葉。もともと芸術活動をされていた経験から、栽培の工程から販売まで全て独自の方法でデザインすることを意識されており、農業そのものが芸術であるといいます。冬場のフルーツトマトでは難しいとされている有機栽培にも挑戦中。