百年の生命力

高知県の西部、四万十地域では、伝統的な庭先の風景として「ぶしゅかん」の木が植えられています。これらの木は各家庭で世代から世代へと受け継がれており、酢みかん文化が根付く高知において、ぶしゅかんは「酢みかんの王様」とも称されています。この地域固有のぶしゅかんは、外見がスダチやカボスに似た緑色の小さな果実で、正式には「餅柚(もちゆ)」と呼ばれていますが、地元では広く「ぶしゅかん」として親しまれています。驚くべきことに、四万十市には樹齢100年以上の古木もあり、現在も元気に実をつけています。病害虫に強く、収穫しやすい特性から、高齢化が進む地域社会にとって農業振興の希望となっています。

四万十地域の方々に長く愛されている四万十ぶしゅかん。
四万十地域の方々に長く愛されている四万十ぶしゅかん。
たわわに実る四万十ぶしゅかん。
たわわに実る四万十ぶしゅかん。

 

 

四万十ぶしゅかん産地化

「高知の酢みかんの中で一番魚料理との相性が良いんです」と、生産者の伊与田真哉さんは教えてくれました。伊与田さんは2011年から「四万十ぶしゅかん」産地化構想に携わり、四万十地域の人々に長く愛されているぶしゅかんを「四万十ぶしゅかん」と名付け、年々栽培面積を拡大しています。2016年に設立された四万十ぶしゅかんの組合は、現在50名を超えるメンバーで構成されており、県内外での知名度を高めています。組合は剪定講習から地元小学校への食育活動に至るまで、多岐にわたる取り組みを展開しており、四万十市の特産品として、広報活動にも力を入れています。

四万十ぶしゅかん生産者伊与田真哉さん。
四万十ぶしゅかん生産者伊与田真哉さん。
伊与田さんから四万十ぶしゅかんの魅力を伺う松本総料理長と斉藤料理長。
伊与田さんから四万十ぶしゅかんの魅力を伺う松本総料理長と斉藤料理長。

夏の万能果実

四万十ぶしゅかんは四万十の夏に欠かせない万能果実で、その酸味とほのかな苦味が特徴です。果汁はさっぱりとした上品な香りがあり、皮も食用に適しているため、刺身、豆腐、タタキ、鍋物、田舎寿司、焼酎など幅広い料理に使われています。四万十の人々にとって「ぶしゅかん」は単なる果物ではなく、地域の象徴であり、生活の一部です。この伝統的な果実が四万十地域の文化として引き継がれ、さらに多くの人々にその魅力が伝わることを願っています。

伊与田さんと松本総料理長と斉藤料理長で記念撮影。
伊与田さんと松本総料理長と斉藤料理長で記念撮影。
四万十ぶしゅかんのイメージキャラクター「ぶしゅまろクン」は四万十市役所の特命職員としても活躍しており、認知拡大のため様々なPR活動を行っている。
四万十ぶしゅかんのイメージキャラクター「ぶしゅまろクン」は四万十市役所の特命職員としても活躍しており、認知拡大のため様々なPR活動を行っている。