奇跡の清流が育む
高知の仁淀川、奇跡の清流に住む「ツガニ」。これは、日本各地に生息する「モクズガニ」の高知での呼び名です。上海蟹の一種であり、海で誕生し、川で成長するこのガニは、鋏脚に生える濃い毛が特徴。四万十川、仁淀川、物部川流域などに生息しているツガニは、独特の濃厚な香りと芳醇な味わいをもち、「ツガニ汁」は高知県の郷土料理の一つとしても知られています。新鮮なツガニを味わえるのは、漁が解禁される8月1日~11月30日の間だけという希少価値の高い食材です。春野町出身のツガニ漁師、清水健一さんは御年74歳(2023年8月当時)。小さいころから川遊びでツガニを獲り、20歳で本格的に漁をスタート。半世紀もこの道に携わってきた大ベテランです。
ツガニ漁の秘密
ツガニ漁は梁のような仕切りを併用した籠漁で行われます。川にいる間は基本的に夜行性で、昼間は水中の石の下や石垣の隙間などにひそみ、夜になると動きだすので、昼間に仕掛けて、朝に仕掛けを上げます。泥などが含まれていない、澄み切った綺麗な水に生息しているため、これまでの経験をもとに仕掛け場所を決めていきます。贅沢にもエサとして使用するのは鮎。ひと籠に3匹から5匹入れるのですが、ツガニは一晩で頭以外の身を綺麗に食べてしまいます。清水さんは甘味や色味を濃くさせる為、獲ったあとのツガニに、南瓜を食べさせているのだそう。
ふんどし甲羅
『獲ったツガニをひっくり返してお腹を見ると、メスとオスの違いが分かる』と清水さん。裏の甲羅が三角に尖って見える方がオスで丸い方がメス。オスのお腹部分にある三角の甲羅は地元の人々から通称「ふんどし」とも呼ばれています。今後も80歳を目標に漁を続けたいという清水さんにお客様へのメッセージを伺うと「身も美味しいが、(ツガニで取った)出汁が本当にうまい」とツガニの魅力を飾らずに力強く語ってくださいました。