創業大正10年、ちりめん加工から始まった老舗の挑戦
「宮進商店」は大正10年創業の老舗。もともとはちりめん(シラス干し)の加工業者としてスタートし、現在もそれがメインの事業です。ところが今から30年ほど前、沖ボラがよく獲れる時期があったことをきっかけに「何か新しいことを」と始めたのが、からすみづくりでした。「最初は手探りの連続だったようですが、何十年も試行錯誤を繰り返すうちに、ようやく今の製法に落ち着いたそうです」と話すのは、お父様からからすみづくりを継承した四代目の宮本進太郎さん。穏やかな口調の中にも、“納得のいくものを届けたい”という強い思いが感じられました。
高知の秋冬は“からすみ日和”
「気温が10度前後で雨が少なく、日照時間が長い高知の秋冬は、からすみづくりには理想的なんです」と宮本さん。10月から12月中旬まではまさに“からすみ日和”だそうで、須崎市の海岸沿い・富士ヶ浜には、飴色のからすみが天日干しでずらりと並ぶ光景が見られます。晴れ渡る青空の下、潮風を浴びながら美しく並ぶからすみは、秋の風物詩として地元を彩る存在でもあるようです。
機械乾燥は使わない。天日干しにかけるこだわり
取材時、宮本さんが見せてくれた作業場には、天日干しで干し上げられるからすみが棚に並んでいました。「他の産地では乾燥機を導入しているところもあるけど、うちは天日干しが基本。昔ながらの方法で、じっくり自然の力を借りたほうが、仕上がりが格段にいいんです」と宮本さんは言います。原料は厳選した天然の沖ボラの真子と塩のみ。血抜き、塩漬け、塩出し、そして天日干しに至るまで、すべて手作業で行います。一腹ごとに塩加減や干す時間を微妙に調整しながら、理想的な弾力・旨み・色合いを引き出しているのだとか。
濃厚なチーズのような旨みと食感
実際に試食してみると、生臭さや過度な塩辛さはまったくなく、ねっとりと舌に絡みつく濃厚なコクが広がります。まるで熟成チーズのような旨みとほのかな甘みがあり、日本酒に合うのはもちろん、パスタや白ワインなど洋食との相性も抜群です。「沖ボラの漁獲量自体が年々少なくなっていて、原料の確保が難しくなってきているんです。でも本当においしいからすみを求めている人のために、この味を守り続けたいと思っています」と宮本さんは話します。
オンラインでも手に入る“本からすみ”の贅沢
希少な原料と手間暇かけた製法から生まれる“宮進商店の本からすみ”は、数量に限りがあるため、決して安いものではありません。しかし、その味わいを一度知ると、「贈答品にはもちろん、自分へのごほうびとしても欲しくなる」と感じる方は多いはず。オンラインショップでも取り寄せが可能なので、遠方からでも手軽にこの逸品を味わうことができます。もし高知県須崎市へ足を運ぶ機会があれば、海岸沿いに並ぶからすみの天日干しの光景もぜひ一度見てみてください。大正時代から続く老舗の伝統製法と、高知の風土が育む極上の味を実感できるはずです。