海洋深層水の町・室戸から始まる新たな物語

太平洋に面した高知県室戸市。広大な海に育まれた海洋深層水は、豊富なミネラルと極めて清浄な水質で知られています。しかし、その豊かな海も、かつては川と行き来していたサツキマスが「幻の魚」と呼ばれるほど激減してしまうほど、自然環境の変化にさらされてきました。秋が旬で希少性の高いサツキマスを絶やさず、いつでも味わってもらいたい――そんな願いから、兵庫県赤穂市に本社を持つ「赤穂化成」が挑んだのが海洋深層水による養殖です。

“塩の町”から飛び出した挑戦者・赤穂化成

「赤穂化成」は、塩の町として知られる赤穂市を拠点に、長年にわたり塩やミネラルウォーターなどを手掛けてきた企業。高知県室戸市には深層水事業所を構え、ミネラル豊富な海洋深層水の採水・加工・販売を行っています。そんな企業が、未経験ながらサツキマス養殖という新たな一歩を踏み出しました。

幻をつなぐ――サツキマスへの熱い想い

秋に川を遡上するサツキマスは、脂ののりが良く、やわらかな甘みとさっぱりとした後味が魅力です。ところが近年、河川環境の悪化などにより個体数が激減。貴重な魚を守り、なおかつ広く楽しんでもらうにはどうしたらいいのか――その答えのひとつが、冷たく清らかな海洋深層水を活用した養殖でした。

未経験からの一大プロジェクト

養殖スタッフは全員が未経験。水温管理や飼料の配合、病気への対処など、試行錯誤の連続だったといいます。高知県海洋深層水研究所や高知県室戸漁業指導所から専門的な指導を受けながら、一つひとつノウハウを積み重ねてきました。その結果、昨年は「室戸プラチナサツキマス」と名付けたサツキマスを約500匹出荷するまでに至ったのです。

銀色に輝く魚体からは「プラチナ」の名がぴったり。刺身で味わえば、上品な甘みと爽やかな脂身が口の中でほどけるように広がります。塩焼きにすると、皮目のパリッとした食感としっとりした身が絶妙なコントラストを生み出し、サツキマス本来の旨味を堪能できます。

現場で感じた情熱

生産現場を訪れると、海洋深層水特有の透明度の高い水槽で、元気よく泳ぐサツキマスの姿がとても印象的でした。大切に育てられた魚たちは、もはや「幻」ではなく、地元の技術と情熱によって未来へと繋がっていく存在になっています。関係者の方々の「なんとしてもサツキマスを絶やしたくない」という思いが、魚の一尾一尾に宿っているように感じられました。

城西館でだけ出会える特別な一皿

希少な「室戸プラチナサツキマス」が味わえるのは、高知県内では城西館だけ。老舗旅館ならではの技で仕上げられる逸品は、素材の良さを存分に引き出した絶妙な味わいです。県外からのお客様はもちろん、地元の方にもぜひ一度味わっていただきたい逸品となっています。

 

海洋深層水が描く未来

室戸という海の恵み溢れる地で育まれるサツキマスの養殖は、地域資源の新たな可能性を示しています。水質や気候変動など、様々な課題に真正面から取り組む赤穂化成の姿勢は、単なるビジネスを超えて「未来の食卓」を見据えた挑戦そのもの。大切に育てられた「室戸プラチナサツキマス」は、幻と言われたサツキマスの新しい姿を多くの方に届けてくれることでしょう。そんな想いが詰まった一皿を、ぜひ城西館でご堪能ください。