
四万十川のミネラル
四万十川の支流沿い、朝霧が晴れる頃、ハウスの中では深い緑のアスパラガスがまっすぐ伸びています。農家歴20年以上の西 充さんが手を添える株は、植えてから20年の “古株”もあります。高知県内では、四万十町のほかに、佐川町、安田町などでも栽培されていますが、土壌から吸収する四万十川のミネラルと昼夜の寒暖差が大きい四万十町特有の気候が適度なストレスとなり、糖度を蓄えた太く甘いアスパラガスが育ちます。
春芽と夏芽
2〜4月の“春芽”は冬に溜め込んだ養分で伸びるため糖度も香りも濃厚。5〜10月の“夏芽”はシャキッとした歯ごたえが魅力です。真夏には芽が2日で収穫サイズへ達するほど成長が早いそうです。「春芽は冬越しで養分をため込むので、噛んだ瞬間に甘い汁が溢れます。夏芽も瑞々しさがあって、美味しいですよ」と教えてくれました。
害虫との闘い
「病気と害虫との闘いが一番大変です」と西さんは語ります。雨が続くと湿気で病気が蔓延しやすく、年によっては虫が大発生します。農薬は定められた希釈率と間隔を厳守し、青い誘引テープや粘着トラップを併用して物理的に捕獲しています。抵抗性が付いた害虫には薬剤を替え、イタチごっこを続ける日々が続きます。
思い通りにならない面白さ
ハウス内ではオス株とメス株を使い分ける工夫も行っています。メスは太く甘いですが回転率が遅く、オスは細めでも伸びが早いです。株更新の際は、収量を見ながら両者をバランスよく植え直します。「一本の株に何本出るかは読めません。思い通りにならないのが面白さです」と西さんははにかんで答えてくれました。今後は若手農家とも連携し、紫品種やホワイトアスパラにも挑戦する予定です。