山内家伝来大根

土佐藩山内家ゆかりの大根

高知市土佐山都網の標高約450メートルにある山頂に近くの畑では、牧野富太郎博士が保存・収集を命じた高知の伝統野菜のひとつ「山内家伝来大根」が栽培されています。

「山内家伝来大根」の山内家とは、関ヶ原合戦後に徳川家康より土佐藩主に任じられた、山内一豊から始まる一族名が由来。土佐へ移り住む際に、ふるさと尾張国の野菜を持ち込んだとされるのが「山内家伝来大根」と言われてます。

地域の仲間と協力して

2016年、それまで土佐山都網地区でユリなどの花の栽培をしていた農家の前田博茂さんのもとに高知県庁から「高知の伝統野菜である牧野野菜の栽培をしてみませんか?」と提案がありました。依頼は高知県に貢献できる理想的な内容だったものの、大根を栽培した経験がなかったことから、二つ返事で依頼を受けることができずにお断りすることも考えていました。

しかし、前田さんが組合長を務める網川営農組合の組員の中に大根農家の方がおり相談したところ、「それだったら他の組合員も協力して一緒に作りましょう」と返答してくれ、地元農家と協同で作ることに決めました。

2年間出荷ゼロ

栽培をはじめて2年間は台風などの影響や経験不足からほとんど収穫ができず、市場に流通させることはできませんでした。苦しい時期でも、大根農家を中心とする組合員とともに知恵を絞り合い、管理体制や肥料などを改善。2018年頃から順調に収穫量を伸ばしていき、2022年には年間2000本以上が出荷されました。

お殿様が食した頃を想像して

一般的な大根とは違い、「く」の字や「S」の字のように曲がって生えるのが特徴で、辛みは少なくみずみずしさがあります。また繊維も細かい為、出汁の味がよくしみ込み、煮物にするととろけるような食感になります。独特な形状からスーパーなどではじめて見かける方には敬遠されがちなのですが、一度食べるとリピートしてくださる方が多いと前田さんは言います。

実は愛知の伝統野菜「方領だいこん」によく似た姿をしており、きちんとしたエビデンスはは無いものの、同じ系譜ではないかと言われています。方領だいこんは、一般的な大根の元になった品種としても有名で、尾張から持ち込まれた山内家伝来大根なら「方領」と同じルーツも持っていたとしても不思議ではありません。高知伝統野菜の牧野野菜を守る「Team  Makino」の一員でもある前田さん。「昔のお殿様が食べていた頃を想像しながら楽しんで」とお客様へメッセージを贈ってくれました。

 

『山内家伝来大根』の和食料理

『山内家伝来大根炙り~地物伊勢海老味噌スープ仕立て~』

 

『山内家伝来大根』の洋食料理

『牧野野菜の潮江菜・山内家伝来大根の地場野菜サラダ』